「今日のひとこと」(別名今日の自己満足......)  Jan. 2002 - 18 April 2005

JUDY AND MARY

JUDY AND MARY 「ジーザス!ジーザス!」(1998) 
 
 バンドサウンドなジュディマリの最高傑作。TAKUYAのギターは,もはや「単なる出たがり」の域を脱し,立派な芸風というかカンロクをみせて超かっこいい。ベースも気合い充分で,「やっちゃろう」という気持ちがよっくわかる。それに加えて,ボーカルのメロディラインがかっこいい。驚くべきことに,このメロディにすごく日本語がよく乗ってて,無理そうでいて無理がない,コトバと音の不思議なからみあい,に聞こえます。

 冒頭から最後までずっとイイんですが,最高にイイのは,短いギターソロから最後のAメロに入っていくとこ。このソリッドな音にYUKIのボーカルがからんでいくのがサイコー。それに応えるTAKUYAのギターが,緊張と落ちの交錯感が程よく,うーん,芸達者。ここのボーカルの入りのところで,ドラムスがくれるキッカケが,もうちょっとさりげないと,もっと良いんですが....

 ほいで,このサウンド的に最高な曲に乗る歌詞が,これまたきわめつけに他愛ないのが,なかなかです。深刻ぶらないところが彼らのベクトルだなぁ。「うわの空くるくるマフラーで」というフレーズを思いついた時点でYUKIの勝ち。うそ泣きがだめ押しの効果音で(笑)。
 

(18/04/2005)
JUDY AND MARY「そばかす」と「くじら12号」(1997) 
 

 彼らのメジャー4枚目の『The Power Source』(1997)は,このバンドのおそらく最初の超がつく大成功。アルバムのコンセプトは「メルヘン(少し幼児退行気味)」だろっかな。サウンド的には「ともかく弾きまくりなTAKUYA」だ。曲じゅうずっと,弾いて弾いて弾いているTAKUYA。この頃の彼には「間」というものがない。これに収まっている2つのヒット曲『そばかす』と『くじら12号』がその見本。
 

 『そばかす』では,サビ以外の部分では左チャンネルで,サビでは左右両方で,ずーっとYUKIのボーカルにからんで弾いている。美しいオブリガートですよ。曲のヤマ場であるブレイク「そっばっかっすのぉー,かぁーずぅーをっ,かっ・ぞっ・えっ・てっ・みるぅ」のとこの左チャンネルは,「ほれほれ,ボクってギターうまいでしょ◎,ほれっ,こんなふうに弾けるんだよボク◎」って云ってるみたいで,ほほ笑ましい。

 この,「YUKIのボーカルにからんでやまないTAKUYAのギター」というのが,この時期のジュディマリのサウンド上の最大の特徴でしょう。この2人のかもしだす緊張関係が,ポップなメロディにのって全国の中高生の胸をあつくさせたわけだなぁ。これが彼らの魅力のひとつだったんだなぁ。

 これは『くじら12号』でも同じ。サビが来るまでのあいだ,左チャンネルのTAKUYAはそりゃもう,弾いて弾いてひきまくる。YUKIのボーカルとどっちが目立つか,競争しているみたい。
 

 これが最後のアルバムになると,「間」のあるギターを弾くようになるんだよ彼は..... 『ひとつだけ』はもちろん,『ラッキープール』(2001)でもそう。「ぬるくなった缶ビール」と「昨日はあんなに傷ついて」の間の一瞬,左チャンネルにいるTAKUYAのひらりとした歌い回しは,その過剰でない刹那の音に,いーい味があります。
 
 

哀悼の意とともに。19/03/2005)
JUDY AND MARY「ひとつだけ」(2000) 
 

 最初にこまかいことを云うと,この曲のききどころは3つある。

 ひとつは,最初のサビの「ゆぅれるぅわぁ〜...」をひきずるYUKIの声を同じ音でTAKUYAのギターが引き取るところ。声がギターに融けてゆく快感。ぁぁいいバンドだなぁ,とそん時思うわけです。

 もうひとつは,曲の山場,2番のCメロの最後のフレーズがサビに渡るときのYUKIのひと叫びフレーズ。これが非常に自然な高揚感をバクハツさせてくれます。うまいなーって思う。プロデューサー誰だ?(TAKUYAだ)。

 最後は,短いアウトロの右トラックのTAKUYAのギター。TAKUYAって,ウマイかヘタかでいえば特に特徴もないし,西川 進のように味のあるフレーズをバシバシかましてくれるというプレイヤーでもない。その彼が珍しく弾いた味のあるフレーズがここに。長い長い弧を描いて絶頂に達しつつもせつなく終わった唄全体を受けた,下行フレーズ中心の,「間」のある,ちょっと泣けるギターです。

 この曲はDメロまである大作で,ABABCDが2回繰り返されるという単純な構成(ただし2回目はABCDと切り詰めてあって効果倍増)。このワンセットが長い弧を描くように,Aの低くて抑揚のない線から,上へ上へ向かって,Cの最後の4小節のシンプルだが非常にウマイ作りの上行メロディからDのサビでの爆発,で頂点をなすんです。これは,特に2番で聞くとバックトラックもそのような弧形にアレンジしてあるのでよくわかる。それを最後の「ゆぅれるぅわぁ〜...」がもやもやっと引き受けるんだけど,そのもどかしい感じがとってもロマンチック。
 

 ....というのは実はシングル盤のバージョンについて言えることで,アルバムバージョン(「WARP」の最後12曲目)はだいぶちがうんですねこれ。YUKIのボーカルトラックが,1番の「ゆぅれるぅわぁ〜...」からあとは,たぶん全部別テイクなんじゃないかなぁ(はじめから全部,別テイクかも。でもミックスが違うからよくわかりません。もしかして全部,ミックスが違うだけかもしんない)。バックトラックのミックスも,アルバムのほうはバンドの音は同じ音源なんだけれども分離を下げてライブな感じにされてて,YUKIの声は逆にデッドで生っぽく前面に出されちゃってるのよ。聴いてて,より心地よいのはシングル盤のほうだけどね... アルバムのほうは,YUKIちゃんちょっとかわいそうかも感,をだしてる気が。

 歌詞は,Tack and Yukkyってクレジットされているので,YUKIは不調だったんでしょう。キーワードは鮮明で,「揺れる」「手(手のひら)」「確かめる」「夏」「空」「風」「花(咲く)」。大局的には大自然とともに夏へ向かう高揚感,をシンプルに唄ってんだけれど,基調にあるのはせつない気持ちです。1番の「さよならは/云わないでね」はともかくとして,2番の「ゆれそうなの/離さないで/あたしを確かめて」は曲全体のなかで異質なストレートさが逆に鮮明で秀逸。

 この曲をレコーディングした時に既にバンドの解散は決まっていたのかどうかは知りませんが,ジュディマリのキャリアのなかでも最もポップでよくできたこのメロディは,唄い手が唄って気持ち良い曲であるに違いなく,それをなぞって2つのテイクを残したYUKIの叫びを聴くと泣ける曲です。
 

  (26/02/2005)