最初にこまかいことを云うと,この曲のききどころは3つある。
ひとつは,最初のサビの「ゆぅれるぅわぁ〜...」をひきずるYUKIの声を同じ音でTAKUYAのギターが引き取るところ。声がギターに融けてゆく快感。ぁぁいいバンドだなぁ,とそん時思うわけです。
もうひとつは,曲の山場,2番のCメロの最後のフレーズがサビに渡るときのYUKIのひと叫びフレーズ。これが非常に自然な高揚感をバクハツさせてくれます。うまいなーって思う。プロデューサー誰だ?(TAKUYAだ)。
最後は,短いアウトロの右トラックのTAKUYAのギター。TAKUYAって,ウマイかヘタかでいえば特に特徴もないし,西川 進のように味のあるフレーズをバシバシかましてくれるというプレイヤーでもない。その彼が珍しく弾いた味のあるフレーズがここに。長い長い弧を描いて絶頂に達しつつもせつなく終わった唄全体を受けた,下行フレーズ中心の,「間」のある,ちょっと泣けるギターです。
この曲はDメロまである大作で,ABABCDが2回繰り返されるという単純な構成(ただし2回目はABCDと切り詰めてあって効果倍増)。このワンセットが長い弧を描くように,Aの低くて抑揚のない線から,上へ上へ向かって,Cの最後の4小節のシンプルだが非常にウマイ作りの上行メロディからDのサビでの爆発,で頂点をなすんです。これは,特に2番で聞くとバックトラックもそのような弧形にアレンジしてあるのでよくわかる。それを最後の「ゆぅれるぅわぁ〜...」がもやもやっと引き受けるんだけど,そのもどかしい感じがとってもロマンチック。
....というのは実はシングル盤のバージョンについて言えることで,アルバムバージョン(「WARP」の最後12曲目)はだいぶちがうんですねこれ。YUKIのボーカルトラックが,1番の「ゆぅれるぅわぁ〜...」からあとは,たぶん全部別テイクなんじゃないかなぁ(はじめから全部,別テイクかも。でもミックスが違うからよくわかりません。もしかして全部,ミックスが違うだけかもしんない)。バックトラックのミックスも,アルバムのほうはバンドの音は同じ音源なんだけれども分離を下げてライブな感じにされてて,YUKIの声は逆にデッドで生っぽく前面に出されちゃってるのよ。聴いてて,より心地よいのはシングル盤のほうだけどね... アルバムのほうは,YUKIちゃんちょっとかわいそうかも感,をだしてる気が。
歌詞は,Tack and Yukkyってクレジットされているので,YUKIは不調だったんでしょう。キーワードは鮮明で,「揺れる」「手(手のひら)」「確かめる」「夏」「空」「風」「花(咲く)」。大局的には大自然とともに夏へ向かう高揚感,をシンプルに唄ってんだけれど,基調にあるのはせつない気持ちです。1番の「さよならは/云わないでね」はともかくとして,2番の「ゆれそうなの/離さないで/あたしを確かめて」は曲全体のなかで異質なストレートさが逆に鮮明で秀逸。
この曲をレコーディングした時に既にバンドの解散は決まっていたのかどうかは知りませんが,ジュディマリのキャリアのなかでも最もポップでよくできたこのメロディは,唄い手が唄って気持ち良い曲であるに違いなく,それをなぞって2つのテイクを残したYUKIの叫びを聴くと泣ける曲です。