カイエビ
Clam Shrimps
水田のような浅い淡水に生息する、「カイエビ」という生き物をご存知でしょうか?一般に体は成長線のある丈夫な甲殻に覆われ、一見すると小さな二枚貝のように見えます。実際、カイエビを始めてみた人の多くは二枚貝の仲間だと勘違いしてしまいます。
そこで、近づいてよ~く観察してみましょう。すると、甲殻の中には、1対のよく目立つ触覚と沢山の肢が並んだ体が入っていることに気が付きます。
カイエビは水中で、これらの触覚と肢をリズミカルに動かして泳ぎまわります。
体には節(体節)も見えます。もし顕微鏡があれば、その体を拡大してみましょう。
肢はその体節に1対ずつ付いていて、体の後端は少し違った頑丈な体節で終わります。
前の方(頭の付け根あたり)に目を移すと大きな顎のようなものがあるのがわかります。
肉眼で見えていた大きな触角の付け根辺りには、もう1対の小さな触覚が見つけられます。
ここまで観察すれば、何かに似ていると思いませんか?
ここでエビやカニの仲間―甲殻類―を想像した人は大正解!
カイエビはエビやカニと同じ甲殻類に分類される生き物で、特に近縁なものにはミジンコ、カブトエビ、ホウネンエビといった仲間があげられます。
ミジンコは理科の教科書でもおなじみですが、カイエビはミジンコをちょっと大きくしたようなそんな体つきをしています。
しか~し!これだけ観察したからといって油断するのはまだ早い。
化石化したカイエビのほとんどは、甲殻を残して体が消え去ってしまいます。そのため、専門家でさえとっさの判断は用心する必要があります。
カイエビ化石の分類は残された甲殻の構造や装飾から慎重に行わなくてはなりません。
ところで、東アジアではジュラ紀から白亜紀にかけてカイエビが大繁栄したことがよく知られています。
この地域・この時代を代表する最も有名な地層といえば中国遼寧省の熱河層群があげられます。
熱河層群の化石生物群は熱河生物群と呼ばれ、近年、我われの認識を覆す新しい発見が相次いで報告されています。
その熱河層群からもっとも大量に見つかる化石が実はカイエビなのです。そして、カイエビはその時代や環境を示す重要な証拠としても利用されています。