新潟大学 自然史のパッセージ
青海石灰岩の成り立ち
 新潟県西端の糸魚川市には青海石灰岩体と呼ばれる石灰岩からなる地層が分布しています.石灰岩は幅約3km,北西-南東方向13kmのひろがりをもち,黒姫山と明星山という2つの独立峰を含む巨大な石灰岩体です.  黒姫山には大規模な石灰岩の採石場があります.そこから掘り出される石灰岩はセメントのほか製鉄や化学工業の原料として私たちの生活になくてはならない資源です.
 石灰岩は主に方解石(炭酸カルシウムCaCO3を主成分とする鉱物)からできている岩石であり,90%以上の石灰岩は海にすんでいた生物によってつくられたと考えられています.  青海石灰岩は層理面(地層と地層とを境する面)をもたない塊状石灰岩です.石灰岩をつくった生物(化石)を調べることによって,青海石灰岩は古生代の前期石炭紀~中期ペルム紀(約3.4~2.5億年前)の約9,000万年間に,暖かく浅い海,つまり大昔の礁でつくられたことがわかります.
 青海石灰岩には有孔虫,サンゴ,コケムシ,腕足類,アンモナイト,三葉虫,ウミユリ,石灰藻などの化石が豊富に含まれています.なかでも有孔虫の1つのグループであるフズリナ類は,青海石灰岩の最下部から最上部まですべての層準から,さまざまな種が大量に産出するので,この化石を用いて青海石灰岩の時代,構造,層厚を知ることができます.
 フズリナ類は石炭紀~ペルム紀の主に暖かな海で繁栄した原生動物です.紡錘形~球形で大きさ0.2~60mm(多くは1~10mm)の複雑な構造をした石灰質の殻をもっています.フズリナ類の化石を広い範囲にわたってくまなく採集し,分類学的に詳しく調べることによって,青海石灰岩が前期石炭紀~中期ペルム紀に形成された,約1,000mの厚さをもつ石灰岩体であることが明らかにされました.